弁護士山内良治 兄からのサンデイ毎日「少子高齢化対策の切り札“生涯現役時代”の到来早まる」(6)

また、生涯現役のメリットは、就労高齢者の場合、無職の高齢者に比べて、社会の中で働き甲斐を感じ、心身の健康維持努力をします。このため、日常活動度(ADL)障害リスクが減少し、医療費・介護費の削減にもつながります。さらに、就労高齢者ほど、無職の人に比較して、所得があるため消費活動も活発で、経済の活性化にも寄与します。

逆に言えば、これまで定年退職制度によって、仕事場から切り離され、仕事を通じてつながってきた会社社会からも切り離され、制度によって強制的に孤立化させられてきたことが、人工的に老化を加速していたといえるでしょう。これを改めれば、生涯現役社会で、人とのつながりを保ちながら、働くことに生きがいを感じて、「正しい老い方」ができるのかもしれません。

政府も企業も、生涯現役を受け入れる制度改革が急がれます。が、労働力不足と今後急速にかさむ高齢者介護負担という少子高齢化時代の諸問題が大きく緩和させられる「生涯現役時代の到来」は、政府の政策支援もあって、予想外に早いように感じます。

それではまた。

山内一三 記

(兄からのサンデイ毎日「少子高齢化対策の切り札“生涯現役時代”の到来早まる」)

弁護士山内良治 兄からのサンデイ毎日「少子高齢化対策の切り札“生涯現役時代”の到来早まる」(5)

次に必要なのは、生涯現役の制度です。政府内でも、経済産業省の「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」という提言では、長期政策課題として生涯現役制度の促進を推奨しています。そこでは、従来通り生産年齢人口18-64歳の世代が、65歳以上の高齢者を支える場合には、老年人口比率(生産年齢人口÷高齢者人口比率)が、2020年2.0人、2050年1.3人となります。

生産年齢世代1.3人で1人の65歳以上の高齢者を扶養する計算で、現役世代へが負担する高齢の扶養負担が、人的にも資金的にも、極めて大きくなります。すでに高齢者の護要員不足が厳しくなっており、給料の大半を高齢者の扶養負担のために天引きされ、次世代を育てるための「子育ての余裕」がなくなります。

しかし、今後、75歳までを生産年齢人口にできれば、老年人口比率が大きく改善します。すなわち、生産年齢人口18歳―74歳で、75歳以上の高齢者を支えることになるので、老年人口比率は、2020年には現状の2人から4.7人へ、2050年には1.3人から2.7人へと、倍増します。

(つづく)

弁護士山内良治 兄からのサンデイ毎日「少子高齢化対策の切り札“生涯現役時代”の到来早まる」(4)

最近、周辺の高齢者と話していて気付くのは、「若い頃にはとても想像ができなかったが、高齢になった現在の自分の心身機能は強健だ」と感じている人が多いことです。そして、現状の自分の心身能力を前提に、「高齢者の人生は、ただの命が消えるのを待つ余生ではなく、第二の人生として、積極的に70歳以降の生き方を考え直す必要がある」と感じている人が増えています。その選択肢として、「生涯現役を続けよう」、「生涯現役に生き甲斐を見出そう」とする選択だと思います。

政策面では、現在、企業に70歳までの就業機会確保への努力義務を課す「高年齢者雇用安定法」の改正案が通常国会に提出されています。まずは、70歳になるまでの60歳代の働き手を増やす政策です。少子高齢化で増え続ける社会保障費の支え手を増やすため、定年延長だけでなく、60歳台世代の再就職の実現や起業支援などのメニューも加えられています。21年4月から実施される見通しです。

(つづく)

弁護士山内良治 兄からのサンデイ毎日「少子高齢化対策の切り札“生涯現役時代”の到来早まる」(3)

2018年9月に経済産業省が出した「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」という政策提言では、「高齢者の体力・運動能力はこの10年強で約5歳若返っている」「今の70代前半の高齢者の能力は、14年前の60代後半と同じ」と報告しています。また、「日本老年学会・日本老年医学会高齢者に関する定義検討ワーキング・グループ報告」によると、高齢者の運動能力を測る通常歩行速度は、65歳以上の高齢者の歩行速度が、近年急速に早くなっています。2006年時点でさえ、1997年と比較すると、歩行速度は、わずか10年間で10歳若返っています。

2006年時点の調査に見る体力・運動能力の著しい改善状況から推定すると、現状は、さらに高齢者の若返りが進んでいると思われます。本人でさえ過去の社会常識にとらわれて、自己の若返りを十分自覚できないうちに、心身の能力の若返りが進行しているようです。その結果、無意識に「私は、元気だ。もっと働ける。死ぬまで働きたい」という、生涯現役意識が高まっていると思います。

(つづく)

弁護士山内良治 兄からのサンデイ毎日「少子高齢化対策の切り札“生涯現役時代”の到来早まる」(2)

70歳以上まで働きたいと回答した人の属性は、男女比では、女性28%、男性45%と男性の希望者が多く、職業別では、正規社員が28%と低く、自営業72%、また、パート、アルバイト、契約社員など非正規社員が46%と高めでした。調査によると、「老後不安を感じている」と回答した人が76%もいて、不安の理由は健康面71%で、生活資金・経済面68%でした。健康維持、生活資金獲得など、老後の不安をを解消する目的で、生涯現役を希望する人が多いようです。

記事からの引用は以上です。ただ驚くのは、すでに60歳台の54%が、70歳以上も働くつもりと答えているように、生涯現役に向かって、一気に国民の意識改革が進行している事実です。この意識改革を可能にしているのは、その根底に、高齢者の健康状態が過去の同世代に比べて、著しく改善されているためです。生涯現役を希望するためには、高齢者の健康状態がよく、身心機能が健常でない限り、労働生産性を維持できず、労働意欲も湧かないでしょう。

(つづく)

弁護士山内良治 兄からのサンデイ毎日「少子高齢化対策の切り札“生涯現役時代”の到来早まる」(1)

お元気ですか?

1月11日の日経新聞で、2019年秋に実施した郵送世論調査(18歳以上の男女無作為抽出、回答数1677人、回答率56%)によると、「70歳以上まで働くつもりだと答えた人が、60歳代の54%にのぼった」という記事が一面トップに載っていました。一年前の、2018年秋に実施した調査に比べて9ポイント増えています。「人生100年時代」を迎え、高齢者を中心に就労意識が大きく変わっており、生涯現役時代へ移行している姿が、浮き彫りになっています。これに対応するため、政府も企業も、高齢者が働き続けることができる制度づくりを、前倒しする必要があります。

記事によると、「何歳まで働くつもりか」と選択肢を挙げて聞いたところ、「75歳以上」と回答したのは全体の16%、「70歳から74歳まで」が21%で、合わせて37%の人が70歳以上まで働くことを希望しています。特に、定年を間近に控えた60歳台では、54%の人が70歳を過ぎても働くつもりと、回答しています。また、70歳代の人も、75歳以上まで働きたいと回答した比率は、34%に上っています。実質的には「働ける限り、働きたい」という、生涯現役を希望する人が増えています。

(つづく)

弁護士山内良治 兄からのサンデイ毎日「“プア充”という先進国型低所得のライフ・スタイルについて」(7)

客観的に見れば、今後予想される我が国の経済成長率は、人口減少による消費の伸び悩みや、労働力となる15歳から64歳までの生産年齢人口の減少を考慮しますと、年率1%前後のGDP成長が当面の努力目標になり、やがては経済が縮小する時代を迎えるでしょう。現在世界3位の我が国の経済規模も、一人当たりGDP額の我が国の国際的順位も、さらに徐々に下落ていくことになります。しかし悲観する必要はありませんGDP規模や所得額を競うというのは、物質的豊かさを求める中進国の発想です。

高い所得や、高級品やブランド品など物所有を、他人と競うように情熱をもってを追及した時代は、実はまだ物に満たされない人々が多い、中進国の競争社会の発想であった事に気づきます。そもそも生活インフラが整った環境に暮らし、必要なに日常の生活用品は安く、また、必要な情報も安く、さらに無料で入手できる先進国経済では、価格で測るGDP規模は、容易に成長しません。幸福の尺度として、GDP自体がそぐわなくなってきます。

我が国の政策も、今後伸び悩むGDPの国際比較にこだわることなく、グローバル化、少子高齢化、情報技術革新、地球温暖化など、生活環境の変化に適合できるように、政策の座標軸を合わせれば良いようです。そして、それぞれの個人が、多様な所得レベルや生活環境に合わせて、個人の生き方の選択ができる生活基盤を、政府は提供し続ける必要があります。

それではまた。

山内一三 記

(兄からのサンデイ毎日「“プア充”という先進国型低所得のライフ・スタイルについて」)

弁護士山内良治 兄からのサンデイ毎日「“プア充”という先進国型低所得のライフ・スタイルについて」(6)

今後も、グローバル化は進行し、AI革命で定型型労働は機械にとってかわられ、所得格差の拡大は進行するとみられます。エリート社員や正規雇用社員と、非正規雇用社員とに二極化が続きます。プア充は、高度情報化社会における、過度な物欲を抑制して、足るを知る」生き方と言えます。物の所有を控え、貪る心、利己心を抑制すれば、心の焦点が拡大して、見えなかったものが見え、気づかなかったことに気づき、世界は無限に豊かで、大きく広がっていることに気づきます。

足るを知る生き方ができれば、所得は低いが、人と助け合い、愛し愛され、人との相互依存関係に精神的な充実と生きがいを求め、自然をいつくしめる生き方ができます。自己実現ができるカネのかからない趣味を仲間と楽しみ、家族との交流時間を確保するため、生活時間のゆとりを優先します。趣味や嗜好が合い、相互理解できる人間関係を取り結び、自然を楽しむことにも精神的な充実を覚える高度情報化社会が可能にした、極めて先進国的な生き方と言えるでしょう。

プア充ばかりでは、日本経済は成長しないし、税収も伸びず国家財政も持たないという懸念もあるでしょう。しかし所得格差が拡大しており、ライフ・スタイルの多様化で、国民すべてがプア充を望むわけではありません。我が国では、伝統的に仕事に自己実現の喜びを見出している人たちが、主流でした。

したがって、税負担は、年齢には関係なく、資産と所得、仕事能力に応じた負担を、徹底していくことになるでしょう。現在、一人当たり名目GDPを見ると、スイスや北欧諸国が最も高く、米国は9位で62,869ドル、ドイツが18位で47,662ドル、フランスは21位で42,953ドル、日本は26位で39,303ドル、そのあとに27位イタリア34,320ドル、28位韓国で33,319ドルと続きます。

(つづく)

弁護士山内良治 兄からのサンデイ毎日「“プア充”という先進国型低所得のライフ・スタイルについて」(5)

かって英国で生活をしたときにも、週末には多くの在英日本人は観光のため、遠くにドライブしました。が、英国人たちは、近場のキャンプ場でキャンピングカーを止めて、仲間たちと、キャンプをしたり、たむろして簡素な紅茶とビスケット程度で、日光浴をしながら、会話を楽しんでいました。また、隣の主婦が、妻に英語を教えてあげると日々押しかけてお茶をし、近隣づきあいを大切にしていることがわかりました。

さらに、歴史を振り返っても、経済成長が止まり、単純再生産社会に陥った江戸時代後期には、一日に繰り返す仕事量が決まっていました。武士も町人もあくせく働かず、余暇を楽しみ、趣味を深めました。江戸時代は、犬猫のペットブームや、朝顔や菊の園芸ブームが起こり、変わり花を咲かせるために、自宅で品種改良にまで精を出しました。

歌舞伎や浄瑠璃の鑑賞に加えて、茶の湯、俳句の月並み会、謡曲や長唄の会、寺社詣など、「仲間たちとする趣味」を磨き、相互に鑑賞して楽しみました。かって落語家の桂米朝が、「本当の咄家の楽しみは、念入りに前振りをしないと、話の落ちが理解してもらえない素人相手の落語ではなく、深く芸が理解できる少人数の趣味人の中で話すことだ」と語っていました。深く趣味を極めた仲間同士の会で、競うように芸を披露しあうのが、生きがいのある趣味だったのでしょう。

(つづく)

弁護士山内良治 兄からのサンデイ毎日「“プア充”という先進国型低所得のライフ・スタイルについて」(4)

そして、今になって、健康医療情報は、老後の健康と幸せを維持する条件として、適度な運動、バランスのいい食事、趣味を持つことに加えて、「良好な人間関係」を重視する意見が目立つようになりました。しかし、人間関係や趣味を深めることは、中年なら間に合うでしょう。が、没頭できる趣味もなく、孤立化してしまっている高齢者には、もはやその手段が限られて、手遅れ感が強いようです。

プア充は、物欲ではなく、物を介在した豊かな社交性と人間的な心のつながりを求めています。相互に物をお裾分けし、日常生活では相互に足りないものを補って助け合い、生活に必要なものは貸し借りし、相互に関心あることに共感するという、一昔前の村落の濃密な人間関係に似たものを求めて、楽しんでいます。

プア充は、子育てにおいても、相互に情報交換し、親に連れられてきた子供同士は、核家族化や少子化で失われた「相手を思いやる」という、社交性を回復できます。そして、将来の引きこもりのない健全な社会生活に必要なコミュニケーション能力を高め、好奇心を持って、関心分野を広げていきます。中高年の場合、観劇、美術鑑賞などに加えて、女性はマージャンやポーカーゲーム、カラオケ、手芸など、趣味をめぐって集い、カネのかからない社交の場を広げていきます。

(つづく)